久しぶりに東野圭吾さんの小説を読ませていただきました。
とにかく心が温まる。
そんな素敵な物語でした。
今回は「クスノキの番人」の感想です。
※ネタバレ要素がありますので、読まれる際はくれぐれもご注意ください。
クスノキの番人
主人公の玲斗がクスノキ番人になったのは本当に偶然なのですが、必然のようにも感じました。
伯母の千舟から成り行きで引き継いだ仕事は「クスノキの番人」。
柳澤家が代々管理している月郷神社に、太古から鎮座しているクスノキ。
このクスノキには不思議な力が宿っているのですが、玲斗は詳しいことを何も知らずに番人になり、そこに祈念する人達と関わるうちに、その秘密に迫っていく過程に惹きつけられました。
パワースポットにもなっていると言うクスノキの秘密。
最初は千舟は何も教えてくれません。
祈念に来る人達からの情報が少しずつ集まって、そして形になっていく。
まるでパズルのような感じ。
その謎が知りたくて、どんどん読み進めてしまう程でした。
繋がり
玲斗と千舟を始め、千舟の親族や祈念する家族のそれぞれの物語がとても丁寧に描かれています。
私は佐治さん一家のピアノの話が特に感動しました。
亡き兄の念をを受け取った弟が、認知症の母のために何とか念の音楽を形にしたい。
その過程で巻き起こる娘からのあらぬ疑いやら、玲斗とその娘とのやり取りなどが、まるでミステリー小説のようで面白かったです。
そして曲が完成した際の、認知症の母親に涙しました。
また、血のつながりのない亡き父からの念を、受け取れるはずがないと最初からあきらめていた息子の苦悩。
玲斗のアドバイスもとても良かったなと。
いつの間にこんなことが言えるようになったのだろうと、少し驚かされました。
そして千舟の玲斗の母親への想い、自身が関わってきたホテル事業へのプライドや、玲斗との心の交流なども見どころです。
人の想いは、いくら言葉を並べ立てても完全に伝えることは難しい。
だからこそのクスノキの祈念と番人の仕事は受け継がれていったのでしょうね。。
まとめ
玲斗と千舟の距離が、どんどん縮まっていくのがとても微笑ましかったです。
敬語の使い方や生活態度など、千舟に何かと注意ばかりされていた玲斗が、どんどん成長していくのは頼もしかったですね。
玲斗の出生に関しては同情を禁じ得ませんでしたが、きっと根が素直なんでしょうね。
人の意見をきちんと聞くし、思いやりもある好青年。
ラストの千舟と玲斗のやり取りは、本当に泣けました。。
千舟の心情を察すると、とても不安でたまらないでしょう。。
でも、そんな不安を温かく優しく溶かすような玲斗の言葉に癒されました。
これから玲斗が自分の人生をどう歩いて行くのか、また千舟とはどのようになっていくのか。
千舟に関しては少なからず心配はありますが、玲斗が付いているなら大丈夫だなと、心のどこかで信頼している自分がいます。
それ程に、彼自身の成長が見て取れましたから。
クスノキの番人として成長していく玲斗を、ぜひ確かめて欲しいと思いました。