京極夏彦さんの小説のファンなのですが、相変わらず新刊がなかなか出ませんね。
そろそろ「鵺の礎」がでると噂で聞いたのですが。。
そんな折、恒例のamazonプライムデーでkindleもキャンペーンをやっておりいろいろ眺めていたところ、京極夏彦さんのシェアードワールドを見つけて早速購入。
どうやら何冊かあるようなのですが、今回は『薔薇十字叢書 天邪鬼の輩』の感想を綴らせていただきます。
簡単なあらすじ
関口たちがまだ学生時代の話。
校内でも抜群の人気と知名度を誇る榎木津が、女学生を妊娠させたという噂が広がります。
相手の女学生とは面識があるもののそんな事実は到底なく、榎木津を救うために中禅寺と関口が事件解決に奔走します。
そうして明かされた真相とは・・・?
おなじみの登場人物に降りかかる事件
まだ完全に病んでいないせいか、素直で正義感のある関口。
成人した本人の片鱗はあるものの、まだまだ青臭さの残る学生の中禅寺(京極堂)。
榎さんにいたっては、成人した本人と比べると至極まともな学生(笑)。
そんな3人の出会いを描いた学生時代の物語です。
当然京極夏彦氏ではなく別人が書く為、ある程度の違和感は仕方ないと思っていましたから、完全に二次創作の別物として読ませていただきました。
実際に読んでみると、とても読みやすい文章でラノベにありがちな軽いノリや癖がなく、スルスルと流れるように読み進められました。
学生時代ということでみんな素直すぎる感じはしますが、学生の頃は本当にこんなことがあったのかもしれない、と思わせる無理のないストーリーで、3人の友情にも心が温まります。
ですが、やはり若干の違和感は否めないですね。
特に関口君の描写は、オリジナル版では「サル」が定番で、容姿についてはまぁそこからおおよそ察することはできるのですが、中禅寺が殊更に「ハムスター」を連発するのには少なからず抵抗が・・・。
関くんってそんなに可愛かったの??
榎さんも確かに変わり者ではあるのですが、それでもインパクトが弱すぎるというか、「少し変わったところのある美少年」という感じでしょうか。
まぁ「姑獲鳥の夏」の頃の榎さんはまだそれほどの変人ではなかったので、学生時代ならこの程度だったのかな。
京極堂については、若干関口に対して甘すぎる印象はありますが、やはり学生時代と考えれば納得できる範囲かなと思いました。
肝心のミステリー部分ですが、学生が解決することもあり、犯人の目星は割と簡単につきますし動機についても特に目新しいものはないと思います。
また犯行が明らかになった際の犯人の行動も短絡的で、作家本人が言っている通り二時間ドラマのようです。
だからと言って決して面白くないわけではなく、事件解決に向けての3人のやり取りや学生生活なども盛り込まれている為、飽きることなく最後まで読み進められました。
まとめ
京極夏彦さんの続編としてではなく、あくまでも二次創作と読む分には面白かったと思います。
ただ、どうしてもオリジナル版の性格やイメージが破綻しているのは許せない、という方には向かないかもしれません。
「鵺の礎」の発売に待ちくたびれてしまって、パラレルでも大丈夫!という方は、繋ぎとして読んでみるのもいいのでは・・・?