以前から気にはなっていた「蜜蜂と遠雷」。
Kindleでキャンペーンをしていたので、何となく買っておこうくらいの気持ちでポチったのですが、これは購入して大正解でした。
先が気になる展開
とにかく先が気になって仕方がない。
切りのいいところまで、と思っていてもどんどん読み進めてしまいました。。
もうちょっと味わってゆっくりじっくり読みたいのに、と思いつつ、どうなるの?という好奇心の方が強くてページをめくる手が止められない。
久しぶりにそんな小説と出会いました。
この小説はピアノのコンクールの話です。
順位がつけられ、当然予選で落ちる人もいるわけです。
その辺りの描写ももちろんなのですが、どういう演奏をするのかという部分も楽しみで。。
しかもその曲がどんな曲なのかも気になるし、主人公達の関係性もどんどん変化していって、これもまた気になる要素(笑)。
先が知りたいという欲求を、ここまで引き出す作家の力量に感服です。
圧倒的な表現力
ストーリーもすごく素敵なのですが、驚いたのが表現力。
音楽を文章で表現するって、抽象的な表現にしかならない気がしていたのですが、この作品は違いました。
本当にグイグイ引き込まれる文章で、聞いたこともない曲名でもイメージが膨らんでくるのです。
私はクラッシックには全くといっていいほど疎いのですが、それでも演奏部分では感動しました。
本当に聴いてみたい。
そんな感情が溢れてきます。
魅力的な登場人物
登場人物もとても魅力的です。
4人のメインキャラクターがいるのですが、それぞれ背負っているものや環境などが様々で、どの人物にも感情移入してしまいます。
また、この4人も含めて性格の悪いというか好きになれない登場人物が一人もいない。
みんないい人なのです。
癖のある人はいるのですが、こういうコンクールだと足を引っ張ったり、他人を貶めたりするような嫌われキャラがいそうなんですけど、少なくとも私は発見できませんでした。
なのでストレスがない(笑)。
純粋に音楽と、それに向き合う登場人物達に没頭できます。
4人のうち、一人だけ社会人がいるのですが、その人以外は俗に言う天才肌。
その割に擦れたところが全くなく、素直である意味可愛いですね。
社会人の人もとても純粋な人で、応援したくなります。
スピンオフ
コンクールの場面は最後まで描かれていません。
順位は事後報告的な形で知らされるのですが、主人公達のその後については特に触れられず。。
これってまたまた気になるじゃん!って思ってたら、スピンオフ作品も出ていました。
私は本編を読んですぐにスピンオフも読めたので、ある意味ラッキーだったかもしれません。
こちらは、気になっていたマサル、亜夜、塵のコンクール後の様子が描かれている短編もありますし、
奏の楽器選びや塵とホフマンの出会いなど、どれも素敵なお話ばかりでした。
個人的には、ナサニエルが本編よりもずっと魅力的に描かれていてとても好きになりました。
ただ、ちょっと短いかな?物足りない感じが。。。
もっと読みたいですね。。
それに、亜夜は留学するとは思っていたけど、ジュリアードじゃないんですね。
まぁ、それが一番妥当かなとは思うのですが、決めた時のマサルの反応が気になります(笑)。
私のように、以前から気になっているけどどうしようかなと迷っている方。
ぜひお手にとってみていただけたら嬉しいです。
音楽ってすごいな、って感じてもらえると思いますよ。