亀石発掘「西原無量のレリック・ファイル」シリーズの2巻目となる本作。
1作目と合わせて立て続けに読んでしまいました。
とにかく先が知りたくて止まらない。
久しぶりにこういう作品に出会いました。感謝!
遺跡発掘と考古学の浪漫
このシリーズはタイトルにもある通り、遺跡発掘を中心に、
天才と呼ばれる発掘師・無量と、同僚の萌絵、幼なじみの忍が事件に巻き込まれ解決していくというストーリーです。
この事件ですが、誘拐だったり殺人だったりするのですが、見事に遺跡や出土品とリンクしていて、事件の謎を解く=遺跡の謎の解明にもつながっていきます。
ミステリーとしても、考古学の解釈としてもとてもよくできていて、本当に面白い。
特に遺跡発掘や考古学についての描写がとても丁寧で、予備知識がない私でもロマンを感じました。
遺跡発掘と聞くと、ふしぎ発見の吉村教授くらいしか思い浮かばない私ですが(汗)、大変繊細な作業と根気が必要なことがわかりました。
また、発掘した出土品の観察や考察などの考古学についてもとても興味深く読むことができました。
これだけでも読み応えバッチリなのですが、さらに事件の真相を解明していく下りが飽きさせず、続きが気になって仕方ありませんでした。
発掘と複雑に絡み合う事件
今回の事件は、弥生時代の古墳(墳丘墓というらしい)から無量が発掘した青銅の髑髏がきっかけとなり、連続殺人が起こります。
殺されたのは、地元での権力が大きい八頭家の跡取り息子と、同じく権力のある降矢家の次男。
両家は神話の時代からの因縁があったらしく、家宝の行方が事件解決の糸口のようです。
青銅製の髑髏を掘り出したことで、無量達も事件の犯人に襲わることに。
髑髏の謎、家宝の謎、そして殺人事件の謎。
いずれも一見関係のないようなことが、解明を進めていくうちに出雲神話や戦時中の出来事などが複雑に絡まっていることがわかり、ゾクゾクします。
特にある人物の出生の謎については、本当に複雑で家系図が欲しいと思ったくらい緻密に設定されており、なんとも言えない物悲しさが残りました。。。
ただ、重苦しい話の中で、無量と彼を取り巻くキャラクターが明るく振舞っているシーンに救われます。
絶妙なバランスの無量と忍と萌絵
ぶっきらぼうで無愛想、語尾に「〜っす」とつける話し方など、ちょっとスレたイメージから入った無量ですが、読み進めていくと、実はとても繊細な感情の持ち主だとわかります。
過去のある出来事により右手に火傷をおい、鬼の顔のような跡が残ってしまったのですが、この「鬼の手」が疼くことにより、今まで様々な遺物を発掘してきたことによりこの世界では有名人。
また以前家族の起こした事件により、考古学の世界では色眼鏡で見られる立場に身をおいています。
その家族の事件の発端となった人物の家族であるのが忍です。
無量の幼なじみなのですが、この事件をきっかけに相当苦労をしています。
英才教育を受けており、元文化庁の役人というエリート。
紆余曲折があり、無量達が所属する亀石発掘派遣事務所(カメケン)に転職してきます。
無量とはお互いがお互いにとって心を許せる間柄です。
そしてこのこの二人の間にに入り込んでいるのが萌絵。
リストラ後に就職したカメケンで無量と出会ったことから、彼らと行動を共にするようになります。
初めは生意気な無量といろいろぶつかっていましたが、何だかんだで無量に好意を持つことに。
この3人の関係がとても気持ちいいのです。
ともすれば、騒がしくなりそうな萌絵の立ち位置なのですが、うまく嫌味にならない女性に描かれていて好感が持てます。
萌絵は無量に好意を持っているのですが、無量はどこ吹く風。
それでも憎まれ口を叩いたり雑な扱いをしながらも、萌絵を信頼している様子が伝わります。
忍も無量を大事にしながら、決して萌絵を邪険に扱ったりしない。
自分が無量の側に居られない時には、萌絵に無量を託す事も。
無量と萌絵がじゃれあっているのを、忍が「いいコンビ」と言って暖かく見守っているのがなんともほっこりします。
まだ2巻目なので、今後の関係がどうなるかわかりませんが、萌絵には頑張ってもらいたいな。
そしてどんどん可愛くなる無量(笑)。
次はどんな謎と事件に巻き込まれるのか。続きが非常に楽しみです。