まったりのんびりほっこり

ゲームや読書などを中心に、日々感じたことを書いてます。

箱根駅伝を描いた小説「風が強く吹いている」感想

私は毎年お正月に箱根駅伝を見ています。

もちろん今年もこたつに入ってお節を食べながらずっと見ていました。

 

毎年思うのは、みんよくあのスピードで走れるなということ。

順位が遅い選手だって、絶対私より早いですし。

 

しかもまだ二十歳前後の若者が、襷を繋ぐために必死に走る姿は、

時に涙無くしては見られません。。。本当に感動ものです。

 

そうして二日間の激闘を観戦したあとには、しんみりした寂しさが残ります。

 

今年はもっと余韻を味わいたい!という欲求の末、ネットでいろいろ検索したところ、

三浦しをんさんの「風が強く吹いている」という小説を見つけました。

私は知らなかったのですが、アニメ化もされているとか。

アニメは機会があればみるとして、早速AmazonKindleでポチりました。

 

素人の寄せ集め・・・?

本を読む前に、何となくこういうストーリーかな〜というのはありましたが、

実際に読み始めたら微かな違和感がありました。

上手く説明ができないのですが、何か想像してたのと違うな〜と。

 

駅伝の小説と聞いたら、大抵はどこかの大学の陸上部が舞台で、

部員同士が駅伝出場目指して切磋琢磨しながら成長していく・・・

というストーリーを思い浮かべるのではないでしょうか?

 

この「風が強く吹いている」も概ねそういうストーリーなのですが、

想像と違っていたのが、ほとんどが長距離走素人の集まりというところです。

もちろん陸上経験者も少数いるのですが、後はほとんど未経験者。

まぁスポーツの経験はある人もいるのですが、それすらもない漫画好きな青年もいます。

 

そんな人たちがたまたま同じ寮に住んでいたため、

灰二という寮長のような人物に上手いこと丸め込まれるような形で駅伝を目指すことになります。

この辺りは読んでいて「そんな簡単に決心できる?」とリアリティのなさに先行き不安になるのですが、

その後の練習場面などの描写で段々と違和感がなくなってきます。

それぞれ個性的なキャラクターの集まりではあるのですが、根は素直なんですね。

純粋というか、スレてないというか。。お人好しでもあるのでしょう。

だから灰二の無茶振りにもついていくんですね。

 

そんな無茶振り男は陸上の長距離経験者なのですが、事情があってずっと一人で走り込んでいながら、駅伝の仲間を虎視眈々と狙っていました。

そして最後に目をつけられたのが、主人公の走と書いてカケルと読むキャラクターです。

 

万引きして逃げているところを灰二に助けられて、結果的に駅伝を目指すことになるのですが、

この万引きに対して何のフォローもなかったのが少し引っかかりました。

後で走が万引き班を捕まえるエピソードもあるのですが、それが贖罪なのかな?

そうではなくて、ちゃんと謝って欲しかったなと思いました。

せっかく後援会になってくれた商店街なのだから。。

それとも違う商店街なのかしら?

 

ともかく、灰二の的確な指導で、メンバーはメキメキと実力をつけていきます。

走は元々長距離の才能を認められていたスピードのある選手なのですが、

過去のある出来事が原因で、タイム至上主義の部活動に対して色々思うところがあるようです。

そんな心の葛藤も、練習を続けていくうちに徐々に解消されていきます。

 

いざ箱根へ

正直、素人の集まりが9ヶ月ほどの練習で箱根に出られるというのはあり得ないと思います。

ですが、そういうリアリティを求めるのではなくて、

選手のひたむきな思いや葛藤などに目を向ければ本当に面白い小説だと思います。

特にというかやはり箱根駅伝を走る描写では感動しました。

 

それぞれ個性が違うので、当然思考内容も違います。

冷静にタイムを計算して走る者いれば、恋愛で頭がいっぱいになってしまった者、体調不良の者など様々です。

その辺りの描写が絶妙で飽きさせないし、むしろどんどん先が気になって読み進んでしまいました。

 

一番の見所はやはり走の場面。

9区を走るのですが、走も初体験のゾーンに突入し、他校のエースが叩き出した区間新記録をあっさり塗り替えてしまいます。

 

今年の箱根駅伝もスニーカーのおかげか区間新がたくさん出ましたけど、当然そういうものはありません。

走の実力で叩き出したタイムです。

走の元々のポテンシャルの高さもあるのでしょうが、本人の走ることに対する情熱がひしひしと伝わってきます。

 

そして最終ランナーは、寮の住人を箱根駅伝に巻き込んだ張本人の灰二です。

彼も過去に色々なことがあり、強豪校へ誘われていながら駅伝では無名の大学に入学します。

それから4 年目にやっとメンバー10人が揃うのですが、それまで諦めずに粘っていたわけですよね。

彼の箱根にかける情熱や走ることに対する熱意が、相当なものであると伺えます。

また彼は足の怪我を抱えており、終盤に痛みが激しくなるのですがそれでも何とか走り切ります。

 

ノンフィではなくフィクションなので、ご都合主義な描写と感じるところはあるのですが、

それでも読んでいると胸が熱くなったり感動で涙がにじんだりする場面がいくつかありました。

 

箱根に向けて沢山の試練を乗り越えた先にあったのは、何だったのか?

ぜひ読んで確かめていただきたいです。